こんにちは、シシ坊です。
猪生初の婚活パーティに参加し、元カノと同じ10歳年下のメグミさん(32)を第一希望に選んでカップリング成功した私。
連絡先を交換したあと、ふたりとも時間があったので、いっしょにお昼ごはんを食べに行くことになりました。
前回の記事はこちら↓↓
第8話: シシ坊、人生初の婚活パーティに参加する Part.5
■レストランを即決、颯爽と先を行くメグミさん
婚活パーティの会場を出て、新宿の繁華街までメグミさんと歩いて向かいました。
天気が良く、お出かけ日よりの冬晴れで、なんだかとても幸先がよさそうな予感がします。
休日にやることは何か、仕事の調子はどうかといった世間話で間を持たせながら、道の両側にある飲食店の看板に目を走らせますが、あまりいい店がありません。
このエリアは食べるところはたくさんあるのですが、ラーメン屋や牛丼チェーンなど、婚活ではじめて会う女性をともなって入るには不向きの店が多いのです。
なのでシシ坊は、新宿の駅ちかくのデパートのレストランフロアに行くことを提案しました。
デパートのレストランなら和洋中いろいろ選べますし、内装もある程度きれいで、席もゆったりしていて長居しやすく、値段も高くはありません。
またメグミさんは7センチほどのヒールを履いていましたが、距離も徒歩五分ほどなので問題なく歩けそうでした。
メグミさんも了承してくれたので、ふたりでそのデパートの入口までやってきました。
入口にあるレストランフロアの案内看板で、お店をさがします。
イタリアンレストラン、アメリカンダイナー、洋食、中華、カフェ、すし、そば……
どの店がいいかひと通り眺めていたところ、脇に置いてあるメニューボードが目に止まりました。
よくカフェの入口に立ててある、こういう黒板です。

ボードはレストランフロア内にあるアジアン風カフェのもので、ランチメニューのタイカレーをオススメしている内容でした。
「タイカレーもありますね」
とシシ坊がメグミさんに教えた矢先、メグミさんは、
「タイカレーにしましょう」
と言い残して、スタスタと先に歩き出したのです。

シシ坊は意表を突かれました。
正直なところ、居心地さえ良ければどこだっていいので、アジアンカフェでタイカレーという選択にはまったく異論はないのですが、
ここにしますか? とたずねられることもなく、メグミさんの即決で決まってしまったのです。
彼女が先に歩き出したので、あとを追いかけます。
すぐに追いついて並んだのですが、メグミさんはあくまで先陣を切りたいようです。
勇猛な武将の後をついていく家臣のような気分ですね。
カフェの入口に着くと、メグミさんは先に中に入り、「いらっしゃいませ、何名さまですか?」と応対に出てきた店員に「ふたりです」とみずから告げました。
これにはけっこう驚きました。
婚活デートでどのレストランに入るかという店ぎめは、
まず男性が提案し、次に女性が意見を出して調整し、最後に男性が決める、
というのがよくある流れかと思います。
実質的には女性の意向に沿いますが、いちおうの建て前として決定権は男性がにぎるのが主流です。
この性役割の慣習を、メグミさんは今日はじめて会う男性とのデートでくつがえしてきたというわけです。
何かの意思表示なのか、果たして無意識なのか……。
やはりこちらの目論見や計算を少し乱される女性だと感じました。
でもそれが不快に感じたのかというと、そういう訳ではありません。
むしろ新鮮で、なかなか面白いと思ったのです。
■ランチデートにて

メグミさんとアジアン風カフェでお昼ごはんを食べながらお話する中で、彼女の背景がいろいろとわかってきました。
去年の春に東京に移住したばかりであること、
これまでは地方自治体のイベント企画等の仕事で、全国に移住しながら働いてきたこと、
今のマーケティングのお仕事は新しい分野への挑戦で、大変だけどやりがいを感じていること、
休日はほぼ欠かさず映画館に通っていること、などなど。
「かなり映画がお好きなんですね」
とシシ坊が水をむけると、
「好きっていうよりは、休日がヒマなので。だって確実に二時間以上をつぶせるじゃないですか」
という答えが返ってきました。
休日がヒマならば、今後デートに誘いやすいので嬉しいポイントです。
ランチプレートを平らげ、そのままお話を続けて30〜40分ほど経ちました。
シシ坊はメグミさんともう少し話したいと思ったので、
「いったんお店変えて、お茶を飲みに行きますか。まだ時間あります?」
と提案しました。
メグミさんは淡々とした様子で「はい。行きますか」と了承してくれました。
席を立つ時、メグミさんは入口のハンガーラックにかけてある自分のコートを自分で持ってこようとしました。
そう来るか……
「あ、いいですいいです。座ってて下さい」
とシシ坊は押し止めて、彼女のコートを取ってきました。
メグミさんはコートを羽織ると、今度はテーブルにあった伝票を取って、みずからレジに持っていこうとします。
そ、そう来るか!?

「あ、いいですいいです、ここは私が出します!」
シシ坊はあわててメグミさんから伝票をもぎ取って、レジに行き、代金を支払いました。
ほんとうに男を動かそうとしないし、また動いてくれるのを期待しない人のようでした。
ここでほんの少しやりづらさも感じたのですが、財布すら出さなかったり、いかにもな「見せ財布」をする女性よりは好感が持てるような気がしました。
「ごちそうさまです」
メグミさんはぺこりと頭を下げましたが、
「次のお茶代は私が出しますので」
と付け加えてきました。
まあ、借りや負い目を作りたくない人なのかもしれません……。
■渇ききった喉に、水(女)が染みわたる
デパートを出たあと、メグミさんが「歩いてすぐ近くのところに知っている喫茶店がある」と提案してくれたので、そこに行きました。
自分から誘ったものの、二次会まで行くことは想定していなかったので、スムーズに次へ行けて助かりました。
この喫茶店でお話しする中で、シシ坊は、心からの充足感を味わっていました。
灼熱の砂漠をさまよい、渇ききった喉に女という水が染みわたってくるかのようでした。
40歳で彼女に浮気され、うつ病を発症し、突然ひとりになってからの二年間。
自然な出会いと恋愛結婚をめざしてあがいたものの、結果はすべて空振りに終わり、
ついに、周りに目ぼしい女性がいなくなってしまった時の絶望感。

あの苦難の二年間はいったい何だったのだろう? と、やるせないため息が出ます。
さっさと婚活パーティに来ていれば、こうやって結婚を求めている女性たちとすぐ出会うことができたのに、何とつまらない意地を張って、時間を犠牲にしてしまったのか?
たった二時間のメグミさんとのランチデートが、二年分の疲労をみるみる癒やしていくかのようでした。
女という水分が注入され、老化した細胞がみるみるよみがえり、肌に張りが出てきたかのような錯覚にさえ、おちいったのです。
この時点では、メグミさんはただのカップリング相手にすぎないのに、
シシ坊はまるでもう、彼女ができたかのような幸せな気持ちになっていました。
次回はメグミさんとの二回目のデートです。
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