こんにちは、シシ坊です。
男女百人が参加する、結婚式場でのバレンタイン婚活パーティに参加した私。

フリータイム開始直後に推定年齢30歳の受付嬢に近寄るも、華麗なる牛歩戦術で避けられてしまいます。
望みがないので見切りをつけ、次に声をかけた女性は……
前回の記事はこちら↓↓
第16話: 50対50バレンタイン婚活パーティ Part.3
■年上のミキさん
「生チョコ、お好きですか?」
シシ坊はビュッフェコーナーの生チョコレートケーキに目を輝かせていた女性に話しかけました。

「大好きです。迷いますよねえ」
受付嬢と同じように脈絡もなく突然話しかけたのですが、その女性は気軽に応じてくれました。
これはいけそうだな、と踏んだシシ坊は「会場のほうでプロフィール交換して話しませんか?」と持ちかけました。すると、
「はい、ぜひ」
と、彼女は承諾してくれました。
さっそくシシ坊はふたり分のお菓子を皿に盛り、彼女はふたり分の飲み物を取って、いっしょに会場の空きテーブルに戻ってきました。
ここまでの流れは非常にスムーズです。

お互いのプロフィール用紙を交換してお話をはじめ、いろいろ彼女のことがわかりました。
名前はミキさん。
43歳で、シシ坊より一歳年上です。

都内の旅行代理店で手配業務をしているそうです。シシ坊と同じ路線電車で都内まで通っているので話が合いました。趣味は温泉めぐりとカラオケだそうです。
(43歳か……)
とっさに気になったのはミキさんの年齢でした。
そして、照明の暗かったビュッフェコーナーから明るいパーティ会場へと戻ってきたとき、ミキさんの顔をはじめて間近に見たのですが、
化粧ノリや顔のシワなどがひときわ目立って見えてしまったのです。
シシ坊だって当時42歳でしたし、自分のことはまったく棚上げした話になりますが、
やはり年上となると、本能的に抵抗を感じてしまう自分がいました。
■年齢は元カノ基準
このパーティの参加者の年齢幅は、男女ともに20歳から45歳までですが、
その年齢幅でシシ坊がカップリングしたいと思う年齢上限は35歳くらいまででした。
ちなみに下限はありません。
40代男性が、ハタチや20代前半の女性とのカップリングをのぞむことは現実的ではないという認識はありつつも、
あわよくば、という願望くらいは頭の中にあります。
男性に限らずアラフォーの女性でも、
できれば年下男子……と、ほのかな妄想を胸に抱くくらいのことはあると思います。
とくに今回、男性の参加費は八千円と高いので、「若さ」という見返りへの期待値はことのほか大きく、
相手が年上だとその期待がまったく満たされないことになるため、割に合わない……と思ってしまうのです。
シシ坊の場合はさらに、10歳年下の彼女と付き合っていた過去が、女性を見る眼にバイアスをかけていました。

できれば元カノと同じ30歳前後、もっといけるなら25歳前後……などということを頭の中で皮算用しています。
(女性を年齢で判断してはいけない、大事なのは人としての魅力だ……)
と、自分自身をたしなめる気持ちも思考の片隅には存在しているのですが、
若さを求めるオスの本能には、たやすく蹴散らされてしまうもろい存在でした。
表面上はミキさんのプロフィールについて興味ぶかげに質問したり、「ケーキおいしいですね」などとにこやかに笑っていましたが、
上述のような本音をごまかすことはできず、どうしても乗り気にはなれなかったのです。
■停滞するフリータイム
ミキさんとの話は適当に切り上げ、ほかの女性へと突進しにいく機会をねらっていたのですが、
思うようにチャンスが訪れませんでした。
男性も女性も、ものすごく動きが悪いのです。
フリータイムなのに、みんな最初にくっついた人から相手を変えようとしません。
やはり女性が一人でいたほうが声をかけやすいので、男性たちには適度に動いてほしいのですが、誰もかれも、ひとりの女性に張り付きっぱなしです。
男性に張り付かれていない女性もいるにはいるのですが、ひとりでいるのが恥ずかしいのか、女性同士で寄り集まって話をしていたりします。
群れられると男性は声をかけづらいです。
五千円も払って参加しておきながら、女子トークだけして帰るつもりなのでしょうか?

日本人には、あまりフリータイムが向いていないのかもしれません。
どんどんフリータイムの時間が過ぎていき、シシ坊は焦りはじめました。
■ジェンガをしに来たんじゃない

そうこうしているうちに、近くのテーブルで巨大ジェンガの参加者の呼びかけがはじまりました。

各テーブルに演出担当のスタッフがいて、ミニカジノやボードゲームを楽しめるのです。
「シシ坊さん、ジェンガやりませんか?」
ミキさんが提案してきたので、ふたりで一緒に巨大ジェンガに参加しました。
ほかの何人かの参加者とともに、通常のジェンガの何倍もある巨大なジェンガのブロック17を積み重ねていきます。(材質はやわらかいクッションでした)
巨大ジェンガは、みるみるうちに1.5メートルほどの高さになりました。
それは今にも崩れそうに揺れていて、ミキさんをはじめ参加者はワーキャーと楽しそうに叫んでいます。
その巨大ジェンガの熱狂をよそに、シシ坊は葛藤していました。
膠着した様子をうかがっているうち、フリータイムの残り時間は半分になってしまいました。
この停滞した空気に従っていたら、ミキさんとしか話ができずに終わってしまいます。
ほかにまだ49人も女性がいるというのに、ミキさんひとりしかカップリングできる可能性がなくなってしまうのです。
俺はジェンガをしに来たんじゃない!
ひとりでも多くの女性と話したいのだ!

そのとき、バランスを失った巨大ジェンガがバラバラと音を立てて盛大に崩れました。
ワーッ、と場がいっせいに盛り上がり、ミキさんも楽しそうに叫びます。
そして同時に、シシ坊の忍耐も限界に達しました。
「ミキさん」
シシ坊は、ジェンガの興奮さめやらぬミキさんに声をかけました。
「そろそろ、お互いバラけましょう……」
続きます。
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