第19話: 50対50バレンタイン婚活パーティ Part.6

こんにちは、シシ坊です。

男女百人が参加する、結婚式場でのバレンタイン婚活パーティ。動きの悪いフリータイムで、男女の組み合わせがなかなか変わりません。

こうなったら横取りを狙うしかない!

片っ端から声をかけまくった結果、ついにチャンスが訪れます。

前回の記事はこちら↓↓

第18話: 50対50バレンタイン婚活パーティ Part.5

■トイレへ行った隙に……

「こんにちは、今おひとりですか?」

トイレ前にひとりで立っていた女性に近づいて声をかけました。

彼女は少し慌てたような、驚いたような顔をしてこちらを振り向きました。

間近で見ると、やはり美人でした。年齢も30歳前後といったところです。

服装もぬかりがなく、スカートに華奢なハイヒールを履いており、髪のまとめ方や、かばんやアクセサリー等も、パーティ向けにしっかり準備してきたことが感じられるコーディネートでした。

余談になりますが、前話までに登場したミキさんは、パンツ姿にぺたんこの靴という、オフィスカジュアルのような格好でした。

清潔感はあるものの、異性の魅力は感じられず、微妙にやる気を削がれていたのです。

そのため反動で余計にテンションが上がりました。

「よかったら、お話しませんか?」

シシ坊はたたみ掛けましたが、彼女はどこか躊躇している様子です。

「あっ……えーっと……」と戸惑いながら、トイレの扉にちらりと視線をやります。

「大丈夫ですか?」とたずねると、一瞬迷っていたものの、

「……はい!」と決心したように答えてくれました。

やった! とシシ坊は心の中でガッツポーズを取りました。

■フリータイムに向かない日本人

彼女を連れて、会場の空いている椅子に向かおうとしたとき、男子トイレから三人の男性が出てきました。

見た感じは、みな20代後半くらいの若い男性です。

彼らはその場を去ろうとする彼女とシシ坊を見て、「あっ……」と小さく叫びました。

どうやら彼女は、今までこの男性たちと話していたようです。

よもや男四人で彼女を奪い合うことになるのでしょうか?

20代の男性が相手では、42歳のシシ坊はかなり不利です。

ただ、彼女はもう彼らと一緒にいる気がなくなったようでした。

三人の男たちに手を振って、

「じゃあねー!」

と別れの言葉を告げ、シシ坊についてきてくれたのです。

これで、奪い合いに勝ったことを確信しました。

片っぱしから割り込んでは、力ずくで横取りする。芸のないやり方ですが、しぶとく続けていれば、時々このように成功します。

「なるほど、今までずーっと彼らと一緒にいたんですね?」

「そうなんです! もう最初っからずーっと取りつかれてて……」

うんざりしたように彼女は答えました。

彼女も動きのわるいフリータイムに苦しんでいたようでした。

おそらくあの男性たちは、ひとりで新たな女性を捕まえに行く勇気が出ないので、三人がかりで彼女を囲ってしまったのでしょう。

しかし女性からすれば、いつまでも同じ男性に取り囲まれていても、ほかの男性が寄りづらくなりますし、男性たちもカップリングの勝率が下がるだけで、本末転倒です。

あまつさえ、トイレにまで男三人でつるんで行き、女性をひとりで待たせるなんて、脇が甘すぎます。

本当に日本人には、フリータイムが向いていないな、と思った出来事でした。

■20代女性をつかまえ舞い上がる

「実はお話したいなー、と思っていました!」

彼女が嬉しそうにそう言ったので、シシ坊は驚きました。

なんと前半の自己紹介タイムで、彼女はシシ坊のことをマークしてくれていたのです。

こんな魅力的な女性が自分のことを……?

そんな言葉を聞かされたら、もう舞い上がってしまいます。

空いた席に座り、さっそくお互いのプロフィールを交換しました。

アユナさん、29歳。お仕事は薬剤師で、総合病院の付属薬局にお勤めだそうです。

年収は400万円。ひとり暮らしで、シシ坊の家からは電車で40分ほどの距離でした。

堅実な医療資格の仕事で、結婚後の収入も安定していそうな点はたいへん魅力です。

しかしそれよりも、プロフを見てすぐに頭に浮かんだのは、

に……20代をつかまえた! やったぞ!!

という喜びでした。

現実的には30代後半の女性とカップリングできれば上等……と思っていたので、これはうれしい誤算です。

失礼な話ですが、ミキさんをつかまえた時とは比べ物にならないほどの達成感を得ました。

しかもアユナさんは、はじめからシシ坊に興味を持ってくれているのです。

婚活をはじめる前の二年間は立て続けに四人の女性にフラれ、もはや自分に男性としての魅力はないと、烙印を押されたような気がしていたので、

この痛快さといったらもう、尋常ではありません。

(どうよ、オラァ!)

42歳の中年男性の自尊心は満たされ、またたく間にオラオラな気分が支配します。

見たか! 俺を袖にした、見る目のない女ども!

出るところへ出れば、俺はまだまだ価値があるのだ!

このときの自分は、さぞかしドヤ顔だったことでしょう。

早くもシシ坊は、アユナさんと真剣交際し、最速で結婚するまでのロードマップを思い浮かべ、さまざまな妄想を脳内に駆けめぐらせていました。

■13歳の年の差

そして、アユナさんがシシ坊のプロフィールを見たときの反応はどうだったのかというと、

ひと言めに出てきた言葉はこうでした。

「あっ……42歳なんですね!」

どうやらアユナさんはシシ坊のことはチェックしていても、年齢を知らなかったようです。

たしかに自己紹介タイムでは、時間の余裕がなかったこともあり、自己紹介の仕方はテーブルごとにまちまちでした。年齢を言ったテーブルと、言わなかったテーブルがありました。

アユナさんのその口調は一見、明るいものだったので、

13歳という年齢差はけっして減点要素ではなく、肯定的にとらえられているようにシシ坊には思えました。

(42歳と思えなかったほど若く見えているのだな、よし)

(20代の若者にはない、年上男性の魅力を感じてくれているわけか、フフフ……)

と、どこまでも自分に都合のよい考え方をすることしか、この時はできなかったのです。

続きます。

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