こんにちは、シシ坊です。
婚活パーティのフリータイムで声をかけた13歳年下の薬剤師アユナさんに「実はお話したいと思っていました」と言われ、舞い上がる私。

しかし彼女がこちらのプロフィールを見た瞬間に出た言葉は……
「あっ……42歳なんですね!」
前回の記事はこちら↓↓
第19話: 50対50バレンタイン婚活パーティ Part.6
■カップリング発表
若い男性三人組に囲われていたアユナさんを連れ出すことに成功したシシ坊は、高揚した気分で彼女とのトークタイムを楽しみました。
まさに旬のタケノコを掘り当てた猪のような気分です。

ただ、このときはテンションが上がっていて気づかなかったのですが、今あらためて当時をふり返ってみると、途中からアユナさんの気持ちに変化があったような気がします。
それというのも、出会った直後からシシ坊の実年齢を知るあたりまでは、アユナさんの表情はきらめいていたのですが、
それ以後はやや受け身がちで、こちらに対する質問も少なく、話を持たせるのに少し苦労したのです。
そうこうしているうちにフリータイム終了10分前になりました。カップリング希望の用紙を提出する必要があるため、ここで一度アユナさんとお別れしました。
カップリング用紙には、希望する女性の番号を三名まで書くことができます。
シシ坊はもちろん、アユナさんの番号を第一希望で記入しました。
第二希望にはミキさんの番号を書きました。

ただ、彼女の番号は保険をかける意味で書いたものの、シシ坊の頭の中はもはや、アユナさんとカップルになることしか想定していません。
第三希望は書きたい女性がいなかったため、記入しませんでした。
そしてフリータイムが終了し、シシ坊は満を持してスタッフに用紙を提出しました。
今回は正直なところ、自信がありませんでした。
前回の婚活パーティのように全員からモテモテの状況ではなく、フリータイムの大半の時間は、たくさんの女性に突撃をかけては拒まれるという失敗に費やされたからです。
ですが、あの硬直しきったフリータイムの中で、やれることはやったという思いはありました。
百人の男女が、ざわざわしながら集計結果を見守る中、シシ坊もひたすら祈りながら結果を待ちます。
やがて、司会がマイクを持って壇上に現れ、カップリング集計が終わったことと、今回カップルになれた男女の合計組数を発表しました。
記憶ではたしか、12、3組だったと思います。約25人前後、参加者の四人にひとりがカップルになったことになります。
男女別なら、八人にひとりという成功率です。
低いな、と思いましたが、あんなに動きの悪いフリータイムでは、当然といえば当然の結果でしょう。
「では、まずひと組めのカップルを発表します!」
司会がカップル発表にかかりました。
シシ坊の番号は15番、アユナさんの番号は23番です。はたして結果は……
■カップリング成功するも……
「ひと組めは男性15番さん、女性23番さん! お二人は前に出てきて下さい!」
いきなり一組めから自分の番号、そしてアユナさんの番号が呼ばれたので驚きました。
そしてすぐに「やった!」という高揚感が押し寄せます。
(どうよ、どうよ!)
シシ坊は、肩を左右にゆらすオラオラ歩きで前へと進み出ました。
そして得意げに歩きながらジャケットのボタンを留めてみました。べつにボタンは留めても留めなくてもよかったのですが、
よくドラマなどで、スーツを着込んだ政治家や刑事役の役者が、歩きながらジャケットのボタンを留めつつ建物に入ってくる演技でドヤ感を表しているので、その真似をしてみました。
アユナさんもすぐ壇上に上がってきたので、笑顔で「ありがとうございます」とお辞儀し合いました。
あらためて彼女を近くで見ると、やはりスタイルのよい美人でした。
(42歳でスペックは並、しかもうつ病の自分が、20代で手に職があり、しかもただ若いだけでなくかわいい女性と結婚をめざせるなんて……)
残りのカップルが壇上に呼ばれている間、シシ坊は陶酔感に酔いしれていたのですが、
問題はこのあとでした。
■資料をほしがるアユナさん

パーティが終了したあと、カップルになれなかった参加者たちは、続々と帰りはじめていましたが、
カップルになった人たちはしばらく残ってください、という案内がスタッフからありました。
主催者から今後の婚活イベントや、婚活エージェントの案内資料を郵送するため、住所と名前を記入してから帰ってほしいとのことでした。
ただ、すでにパーティに申し込む時に住所も名前も入力していたので、なぜもう一度手書きで書かせるのかと疑問に思いました。
しかも記入を受け付けているテーブルをよく見ると、明らかに様子がおかしいのです。
まずスタッフは、なぜか男性の参加者だけに住所と名前を書かせていました。
そして記入させている用紙は、「住所」や「氏名」といった記入欄もなにもない、ただの白い紙でした。
しかも、うっすらと裏側に印刷された文字が透けて見えます。
どうやら、不要になった書類の裏紙を使っているようなのです。
さらに記入のために渡されたペンは、スーパーの安売りPOPでも書く時に使うような、とても太い紫色のマジックでした。
なぜマジックなのか、なぜこんなに太くて紫色なのか、まったく意図がわかりません。
個人情報の扱いはどう見てもいい加減で、シシ坊はこんなものに住所と名前を記入するのがとても嫌でした。
そのためアユナさんに、「資料、いります? なぜか男性しか送られないみたいですけど」
と訊いてみました。
するとアユナさんは、
「あ、一応ほしいです、あとで渡していただければ……」
と言ったのです。
(いるんかい!!)

シシ坊は心の中で激しくツッコミました。
こんないい加減な業者の資料など、ロクなものじゃないと思いますが……。
ですがここで「こんなものには記入できない」と断って、うっかり強い口調になってしまったり、
万一スタッフがゴネて揉めたりすれば、せっかくのアユナさんとの出会いに水を差されかねません。
そのため、仕方なくシシ坊は太い紫色のマジックで、裏紙に住所と氏名を書きました。
太すぎて字がつぶれてしまうので、大きな文字で紙面いっぱいに住所と名前をさらすことになります。
アユナさんはそばでその様子を見ていましたが、恥ずかしかったです。
■お茶せず直帰、そして謎の質問

いい加減な業者に個人情報を渡してしまったあと、アユナさんと二人で結婚式場をあとにしました。
「このあと、お時間ありますか?」
最寄り駅へ向かう途中、お茶に誘うつもりでシシ坊は訊いてみました。

当然「あります」という返事が帰ってくることを期待していたのですが、アユナさんからは、
「このあとまたパーティがあるんです」
というお断りの返事が返ってきました。
用事がある、ではなく、またパーティがある、とアユナさんは確かに言いました。
つまり、これからまた別の婚活イベントに参加するという意味なのでしょう。
そんなことをはっきり言うのに少し驚きましたが、これはむしろありがたく思いました。
アユナさんが複数の男性と仮交際を並行させるのが明らかなので、こちらも心がまえや対策を立てやすいからです。
ただ、そんなに次を急ぐほど詰まったスケジュールで動いているの? という疑問は残りました。

シシ坊の感覚ならば、一日に複数の婚活パーティに参加するとしても、カップリング相手と小一時間、お茶できるくらいの余裕は空けておくからです。
本当は時間に余裕があるけれど、お茶するほどには気が乗らないのでしょうか?
話にあまり花が咲かないまま、最寄り駅に着いてしまいました。
アユナさんは下りの電車、シシ坊は上りの電車で、乗り口は同じホームでした。
そして、ホームでふたり、電車を待っているとき、
アユナさんの口から、謎の質問が発せられました。
「あの、もしかして結婚していますか?」
え?
ど、どういう意味ですか?

続きます。
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