第31話: 仮交際並行編 Part.4

39歳事務員トモコさん、37歳薬剤師のマキさんとの仮交際同時進行をはじめたシシ坊。

マキさんとの初デートに美術展を提案したのですが、ド直球で「興味ない」と言われてしまいました……。

前回のお話はこちら↓↓↓

第30話: 仮交際並行編 Part.3

■たぬちゃんに相談する

40年あまり生きてきましたが、デートの提案に「興味ない」とハッキリ言われたのははじめてです。

それだけに受けたショックは大きく、一体これからどうすればいいのか困ってしまいました。

そこでシシ坊は、友人のたぬちゃんに相談することにしました。

たぬちゃんはタヌキの女の子です。女の子といってもシシ坊よりふたつ下の40歳で、すでに結婚しており、四歳の子どももいます。

彼女が25歳で独身だった頃からの知り合いなので、もう15年の付き合いになります。

ちなみにたぬちゃんには、すでに婚活をはじめたことを知らせていました。

「たぬちゃん困ったよ、訊いておくれよ……じつは37歳の薬剤師さんとカップリングしたんだけどさ……」

シシ坊はマキさんとの顛末をたぬちゃんに話しました。

「ええ? ずいぶんはっきりモノを言う人だね……」

「そうなんだよ……ていうか、女性から美術に興味ないって言われたことなくて、ショック受けちゃって。たぬちゃんだったら、婚活相手に美術展デートを提案されたらどう思う?」

「私だったら北斎展行きたいよ。浮世絵好きだもん。でも芸術は好みがわかれるものだし、初デートで取り入れるには難易度が高かったかもね」

たぬちゃんはまっとうな意見を述べました。たしかにマキさんの好みを何も知らずに、唐突に浮世絵の美術展を提案したのはまずかったと思います。

余談ですが、たぬちゃんとはこのあと美術話で盛り上がり、後日、北斎展と同時期に開催されていた「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」という展覧会をいっしょに観に行きました。

(もちろんですが、彼女の旦那さんと娘も同伴でした)

たぬちゃんのように美術を楽しめる女性が周りに多かったため、女性イコール美術好きというバイアスがシシ坊の中にあったことは確かです。

それに人気の美術展は、混雑することも考慮していませんでした。

じつはシシ坊はどうしてもこの北斎展を観に行きたくて、後日ひとりで六本木アーツセンターまで出かけたのですが、それはもうすさまじい激混みでした。

入場まで30〜40分は待ち、中に入っても押し合いへし合い。

ほんの二年前の話ですが、コロナ禍まっただ中の2021年現在からは考えられないほどの過密な空間でした。

初デートでこんな人混みに巻き込まれ、好きでもない絵画を立ちっぱなしで見るなんてことになったら、仮交際は即終了となってもおかしくありませんでした。

ししシシ坊の反省点はさておき、マキさんの物言いはやはりちょっと疑問です。

言葉えらびの物差しがシシ坊とは異なるだけなのかもしれません。おそらく害意はないのでしょう。

しかし、物事はいくらでも悪い方向へと想像がふくらみます。

『すぐ結婚できると思っていたのにもう三年も婚活を続けてしまっている』マキさんの、

なにか決定的な問題点を見てしまったような気も、どこかでしたのです。

「そんな次第で、いきなり強めに拒否されちゃったから、どうしようか困っちゃってさ」

シシ坊はたぬちゃんにそうこぼしました。

すると彼女は、画期的なアイデアを出してくれたのです。

■水族館ならどうか?

「そうだシシ兄、水族館だったらどうかな? デートの定番コースだし、水族館を嫌いな女子はあんまりいないと思うよ」

たぬちゃんはそんな提案をしてきました。

「なるほど水族館か。それはいいね!」

シシ坊も膝を打ちました。

たしかに同じハコモノでも、美術館よりは水族館のほうが幅広い層に人気がありますし、デートスポットとしても十分定着しています。

イルカのショーに歓声を上げたり、幻想的なクラゲの遊泳に癒やされたり、

アザラシやラッコを見て「かわいいねー」とほほを緩めたりといった、キャッキャ、キャッキャとできそうな要素が盛りだくさんです。

「ありがとうたぬちゃん、最高のアイデアだ! さっそく薬剤師さんに提案してみるよ!」

「シシ兄、がんばってね!」

シシ坊はたぬちゃんとの会話を終えると、すぐさまマキさんにSNSメッセージを送りました。

好みを考えずにいきなり美術館デートなど提案してしまってすいません、と軽く謝ったあとに、

「美術館ではなく、水族館なら興味はありますか?」

と送ったのです。

■まあまあですね

提案のメッセージを送ったあと、シシ坊は「今度は大丈夫だろう」という自信を深めていました。

考えてみれば、美術館は展示の内容しだいで好き嫌いが分かれますし、そもそも絵を眺めに行くなんて退屈だと思う人は、男女問わず、わりといそうです。

そもそも人生で一度も画展に行ったことのない人だって、この世には少なくないかもしれません。

しかしそれに比べれば、水族館のバツグンの安定感はどうでしょう。

小むずかしい前提知識もいらず、目の前の水棲生物の生きる様をながめているだけで時間をつぶせてしまう。

家族づれからカップルまで幅広く受け入れられる余裕。

キレイ、カワイイ、たのしいの三拍子。

まさかこれに文句をつける女性がいるなんて、夢にも思いません。

数十分すると、マキさんから返信がきました。

シシ坊は間違いなく快諾してくれているだろうという期待をよせながら、メッセージを開きました。

そこには、こんな一言が書かれていました。

「水族館はまあまあですね」

シシ坊は絶句し、目をうたがいました。

まあまあ……? まあまあって何……?

まず言葉の意味じたい、マキさんが水族館に行きたいのか、行きたくないのか全然読み取れません。

賛成も否定もしていないからです。

そして意向がわからないうえに、グサリと傷つく返事でした。

「興味がない」と否定されたときよりもなぜか、

「まあまあです」と言われることのほうがショックが大きかったのです。

『何だこの人? 正気でこんなこと言ってるのか?』

シシ坊はショックのあまり血の気が引いて、小刻みにふるえてしまいました。(大げさな比喩ではなく、本当です)

続きます。

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