第32話: 仮交際並行編 Part.5

39歳事務員トモコさん、37歳薬剤師のマキさんとの仮交際を同時進行中のシシ坊。

マキさんを美術館デートにさそったのですが「興味ない」と言われてしまい、お友達のたぬちゃんにどうしたらいいかと相談。「水族館にしたら?」とアイデアをもらいました。

さっそくマキさんに水族館デートを提案したところ、返ってきた答えは「まあまあですね」でした。

前回のお話はこちら↓↓↓

第31話: 仮交際並行編 Part.4

■再びたぬちゃんに相談する

(まあまあ!? まあまあって何さ!?)

シシ坊はマキさんの発言に驚き、そしてちょっと怒ってしまいました。

『まあまあって……すごい上から目線ですね』

怒りにまかせてそんな返事を打ちかけたのですが、すんでのところで思いとどまりました。

感情に流されてSNSやメールのやり取りをすれば、たいがいドロ沼にはまるのがオチです。

今までの経験が、とっさにブレーキをかけてくれたのです。

思いとどまってそれからどうしたのかというと、シシ坊は再びたぬちゃんに相談したのでした。

「たぬちゃん訊いておくれよ、薬剤師さんに水族館は『まあまあですね』って言われたんだ……」

訊いたたぬちゃんも、さすがに水族館のダメ出しには驚いたようでした。

「それちょっと失礼じゃない? 私だったら『じゃあ一体どこがいいんですか?』って訊いちゃうよ」

「たぬちゃんも、やっぱそう思うよねぇ」

『まあまあ』というのは解釈しだいでは『そんなに悪くない』『それもアリ』とも取れるので、べつに水族館デートでも良いのかもしれません。

しかし「まあまあなデート」と思われながら半日をともに過ごすなんて、デートを企画したほうとしては屈辱的なことこの上ありません。

もしこれが自由恋愛なら、いやここからが踏ん張りどころだ、きっと素晴らしいデートにして評価を変えてみせる、となるのかもしれません。

しかしマキさんは条件だけで唐突にカップルを組むことになった女性ですし、好意など抱きようのないごく初期の段階です。

それでデートの企画に「興味ない」「まあまあ」と立て続けに言われたら、なお食い下がろうという気は起きないのです。

「シシ兄、こう言っちゃなんだけど、薬剤師さんかなりクセのある人って感じがするよ。初対面の男性に対してそんなコミュニケーションの取り方するんじゃ、婚活が難航するのも当たり前のような……」

たぬちゃんは女の直感でヤバさを感じているのか、暗に「マキさんは地雷なんじゃない? やめておいたほうがいいんじゃない?」と示唆するようなことを言ってきます。

■放置戦術

「わかったよ、ちょっと考えて薬剤師さんに返事するよ」

シシ坊はたぬちゃんとのチャットを抜けた後、どういう返事をマキさんに送ろうかと迷いました。

正直、「まあまあですね」と言われた直後から、「この人との仮交際はやめといた方がいいかな」とひるみかけてもいたし、ちょっとカチンときてもいました。

怒りを込めてはいけない。だけどやる気も削がれかけている。

そのため結果としては、やや投げやりな返信となりました。

「そうですか、まあまあ位ならやめておきましょう!」

それだけです。

美術館、水族館につづく新たなデートコースの提案はしませんでした。

マキさんが何か言ってくるまでは放置することにしたのです。

返事が来なかったら仕方ない、次の相手を探そう、くらいの気持ちでした。

なぜそのような放胆な戦略が取れるのかというと、

仮にマキさんがダメでも、シシ坊にはまだトモコさんという仮交際相手がいるからなのです。

■トモコさんのアポを取る

仮交際相手が複数いるというのは、シシ坊に心理的な安定感をもたらしてくれました。

この人を失ったらもう誰もいない、また一から相手を探さなくてはならないといった焦りがやわらぎ、落ち着いて婚活に取り組めます。

まさにこういう時のための同時進行なのです。

シシ坊はまず先にトモコさんのアポを取ることにしました。

「今度の日曜にディナーにでも行きませんか?」

とトモコさんにメッセージを送ると、さっそく「行きましょう〜」と返信がありました。

トモコさん、不倫相手と別れたばかりで傷ついていることをみじんも感じさせない明るさです。

「せっかくだから食べたいものありますか? 寿司でもフレンチでも何でもおごりますよ!」

シシ坊は彼女を元気づける太っ腹な男感を見せたくて、そのように打診しました。

なぜそんな強気に出られるのかというと、何を隠そう、年末に職場の忘年会のビンゴで「ぐるなぴ」の食事券四千円ぶんが当たっていたのです。

それを使えば財布に優しく女の気持ちもつかめて一石二鳥、という打算があったわけです。

ちなみに今度の日曜は、マキさんと昼間にデートを約束している日なのですが、

彼女と会えるかどうか雲行きがあやしいので、トモコさんとの夕食の予定を入れることにしたのです。

これでマキさんとのデート予定がつぶれたとしても、まる一日予定が空いてしまうことは防げます。

二人とも会うことになった場合、昼はマキさん、夜はトモコさんと忙しい一日になりますが、面倒だなどとは思いません。

女性との出会いがないあまり、うつ病が悪化していたシシ坊にとっては、ふたりの女性と一日遊んで暮らせるなど、夢のような好待遇だったです。

シシ坊の下心と打算で組まれた完璧な計画に、トモコさんが乗ってきました。

「じゃあ、釜飯が食べたいです!」

釜飯とはけっこう珍しいリクエストです。和食のコースの締めによく釜飯が出てきたりするので、わりと見慣れた食べ物ではありますが、釜飯の専門店というのはあまり聞いたことがありません。

あったとしてもデートに使えるお店でなければならないし、くわえて「ぐるなび」の食事券が使えるお店でなければなりません。

しかし逆に選択肢が限られるぶん、お店選びに迷うことはなさそうです。

さっそくシシ坊はトモコさんとチャットをするかたわら、釜飯を出す飲食店をネットで探し始めました。

するとそのとき、マキさんから返信がありました。

はたしてどういう内容かと中身を見てみると、

「あの、いろいろ考えてもらったのにすみません。じつは見たい映画があるので、映画を観に行きたいです」

二度もダメ出しをして雰囲気がまずくなったと察したのか、今度はマキさんからプランを提案してくれました。

どうやら彼女にも、そのくらいの洞察力はあるようです。

それならはじめから映画を観に行きたいと言ってほしかったですけどね。

何でも良いからとデート企画を丸投げしてきたのに、フタを開けたらぜんぜん何でも良くないじゃないですか!

そういう不満はありましたが、とにかくデートが決まってよかったと思い、映画の前後の予定をパッパと決めました。

13時に新宿駅西口へ集合。お昼ごはんを食べたあと、カフェで時間を調整し、東口の映画館へ向かうという流れです。

そしてマキさんと別れたあとは恵比寿へ向かい、小料理屋でトモコさんと釜飯に舌鼓をうちます。

もちろんその小料理屋では、シシ坊の必殺隠し刀「ぐるなび」の食事券四千円ぶんもバッチリ使えます。

40歳で彼女に浮気され、ひとりになって苦節二年。こんなデート三昧の日が自分におとずれるなんて想像もできませんでした。

婚活バンザイ! とウキウキしながら、シシ坊は当日のダブルデートに望むのです。

続きます。

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