第34話: 仮交際並行編 Part.7

39歳の事務員トモコさんと、37歳の薬剤師マキさん。

ふたりと同日に時間差デートをすることになったシシ坊(42)。

昼は新宿でマキさんとランチ&映画、夜は恵比寿でトモコさんと釜飯を食べに行きます。

忙しい一日になりそうです。

前回のお話はこちら↓↓↓

第33話: 仮交際並行編 Part.6

デートコース決めでゴタゴタゴタゴタ!

婚活エピソード一覧はこちら↓↓↓

■婚活は準備だ

この日は正午から24時近くまで出ずっぱりの長期戦になります。

そのため服装や髪型などは念入りに整えてから出発しました。

マキさんとは13時に新宿駅の西口で待ち合わせですが、シシ坊は12時半すぎに現場に到着しました。

マキさんはカレーが好物だと聞いていたので、お昼ごはんは新宿のわりとマニアックなカレー屋さんへ行く予定でした。

待ち合わせまで30分弱の余裕があるので、まずカレー屋さんまでの経路をたどり、店の外観の下見を済ませました。

ついでに付近のカフェもいくつか見て回り、その中で一番落ち着いて話せそうなお店を、食事後のお口直し用に行く店と決めました。

そして10分前に再び待ち合わせ場所に戻ってきました。

「婚活は準備だ」

婚活をはじめてつくづく思います。

お店の下調べをしたり、服装や化粧など身だしなみを整えれば、デートの成功率は高まります。

そしてそれらの準備は、美人やお金持ちにだけ許された特権でもなく、特別な技術がなければ出来ないようなものでもありません。

自分を少しでもよく見せたいという思いと、数十分の時間があれば、誰にでもできることなのです。

この日の準備は念入りに行いました。もしうまくいかなかったとしても、最善を尽くしたのだからきっと悔いはありません。

■遅刻をものすごく気にするマキさん

全然そんな遅れてないんですけどね

約束の時間の5分前、マキさんからメッセージの着信がありました。

「すみません! 駅の出口をまちがえてしまって遅れます! ごめんなさい!」

これはまあ仕方ないでしょう。新宿駅の西口は広いし、駅構内は迷路のごとく複雑です。詳しくない人が出口をまちがえると地獄をみます。

のんびり待とうと思いましたが、マキさんは意外と早く待ちあわせ場所にあらわれました。

「ごめんなさい! 遅れてしまって!」

通りを早足で歩いてきたマキさんはだいぶ息が上がっていました。

「いえいえ、とんでもないです。大変だったでしょう」

シシ坊は駆け寄ってきたマキさんをねぎらいました。

しかしマキさんはこちらをチラチラと上目遣いでうかがいながら、繰り返し謝ってきます。

「本当にすみません、初回から遅れるなんて印象良くないですよね……」

「べつにそんな遅れてないですよ。気にしないで」

なんだかマキさん、だいぶ気にしたがりのようです。

遅れたといっても13時を一分過ぎたくらいで、事前に連絡ももらっています。

15分おくれてきて謝りもせず「人多いですね……」とのたまわったメグミさんより余程いいです。

なつかしの初婚活相手メグミさん

(メグミさん編はこちら

それにマキさんには、どちらかというと遅刻よりも気にしてほしいことがありました。

それは彼女の服装です。

何をかくそう本日も!!

彼女のコーディネートは、

チノスニ!!

カーキ色のストレートチノパンに白いハイテクスニーカーだったのです!

■異性を感じられない服装

西新宿のカレー屋さんでの一時間はとても楽しく過ごせました。

ちょっとめずらしい、個室で食べることのできるカレー屋さんだったので、周囲を気にせずに婚活っぽい話題を話せました。カレーもとてもおいしく、マキさんに好評でした。

食事のあと、下見で調べておいた喫茶店にマキさんを連れていき、さらに小一時間ほどお話しました。

チャットだといかにもクセの強そうな『こじらせ婚活女子』に見えますが、実際に話してみるとマキさんは人並みの社交性はちゃんと持っています。

よくいる受け身一辺倒の女性ではなく、こちらに質問もいろいろしてくれたりと、場繋ぎに気を使ってくれます。とても快適に、順調にデートが進んでいる実感があるのです。

しかしシシ坊はどうしても、彼女のチノスニという服装が心に引っかかってしまっていました。

『楽しいけれど、異性を感じられない……』

チノパンもハイテクスニーカーもいわゆる”甘さ”のまったくない、男物のようなデザインです。

コートも学生の着るような白いダッフルコートで、あきらかに女性的な持ち物といえばカバンだけでした。

見た目から性的な高揚感が得られないので、『追いかけたい、征服したい』といった男性の狩猟本能が刺激されません。

その物足りない部分は、理屈をこねて自分自身に言い聞かせることになってしまいます。

『服装など小さなことにとらわれるな。性格だとか経済力だとか、もっと重視するべきことがあるじゃないか、シシ坊よ!』

『お前は何しにここへ来た! 街を連れ歩いて自慢できる20代の彼女でも欲しいのか? スカートとハイヒールがお前のゆずれない結婚条件なのか?』

と、いろいろ自分を鼓舞して頑張ったのですが、やはりそこは無理して言い聞かせているに過ぎませんでした。

男物のチノパンとハイテクスニーカーじゃ、どうしたって萎えます。

スカートとヒールには、どうしたって勝てません。

そしてこの後に行った映画館で、シシ坊はマキさんのチノスニにダメ押しの一撃をくらってしまうのです。

■シワシワの太い脚

午後三時ごろ、新宿の靖国通りの映画館まで移動した私たちは、予定通り「マスカレード・ホテル」を鑑賞しました。

上映が終わったのは午後五時過ぎです。

そして事件は上映終了後、室内に明かりがともり、観客が席を立ってぞろぞろと館内を出ていこうとするそのときに起きました。

隣の座席からすっくと立ち上がったマキさんの両脚が、ふとシシ坊の目に入りました。

チノパンの膝の裏に、たくさんのシワが刻まれていました。

それは、見るからに年季の入ったシワなのでした。

何日も洗わずに立て続けに履いているのがわかる、深いシワでした。

そしてチノパンのカーキ色も、汚れやほこりを吸収しているのか、全体的に色の反射がにぶく、くすんでいました。

そのシワとくすみを見た瞬間、シシ坊はとっさに思ってしまったのです。

「あー、何だよもう!……萎えるなぁ……」

マキさんの背後で立ち上がったシシ坊は、(彼女には聞こえないように)ため息をつきました。

このときシシ坊は自分にとって、婚活相手の女らしくない服装というのが、いくら理屈で言い聞かせようとも覆すことのできない大きな不満となるのだということを自覚しました。

このまるで許容できない感覚が、自分でも不思議でした。

はるばる学生時代の初彼女から、40歳で別れた最後の彼女まで、歴代の交際してきた女性にはこのような許せない気持ちを抱くことなどなかったからです。

婚活と恋愛はやはり違うからなのでしょうか。

婚活というものは、好きでもないのに条件だけでお付き合いがはじまってしまうため、

ちょっとでも自分の理想と違うと「この人ナシ!」という拒否反応が出やすいのだと思います。

そして理想と違うという点では、もうひとつ発見してしまいました。

なぜならチノパンごしに見えるマキさんの脚が、けっこう太かったのです。

二月の下旬で長いダッフルコートを着ているせいもあり、いままで体型が目立たなかったのですが、

よく見るとマキさんは、肩も腰もまんべんなく肉がついている寸銅型の体型なのでした。

肥満というほどではないのですが、BMIが25はありそうな気配です。

(太い……ぶっといよもう……)

チノパンのシワと太い脚。

このダブルパンチをくらって、シシ坊はかなり意気消沈してしまいました。

しかし本日のマキさんとのデートは、これで終わりです。

嘆いているヒマはありません。

今からトモコさんに会いに、夜の恵比寿へと急がねばならないのです。

続きます。

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