第35話: 仮交際並行編 Part.8

ふたりの婚活女性と、同日仮交際デート敢行中のシシ坊(42)。

37歳の薬剤師マキさんとのランチ・映画館デートを終え、39歳の事務員トモコさんとの釜飯デートへと急ぎます。

前回のお話はこちら↓↓↓ チノパンのシワに衝撃!

第34話: 仮交際並行編 Part.7

萎えてしまう出来事が……

婚活エピソード一覧はこちら↓↓↓

■二股が楽しすぎる

トモコさんと行く釜飯屋さんは恵比寿にあります。

新宿駅でマキさんと別れると、JR線に乗って恵比寿駅へと向かいました。

42歳の体力では、一日外に出っぱなしで遊び続けるのはきついはずなのですが、さほどの疲れを感じませんでした。

一日に二人もの女性とデートできることがとにかく楽しいのです。

なにしろ40歳でひとり身となってからというもの、(婚活ではない場で)知り合った女性たちに交際を申し込んでも申し込んでも断られつづけ、まる二年も彼女ができなかったので、その嬉しさたるや並みのものではありません。

アドレナリンやドーパミンやエンドルフィンといった脳内麻薬が分泌され、疲労物質を片っぱしから駆逐しているような気がしました。

『なんだ、行くところへ行けば、俺はまだモテるじゃないか』

婚活は、シシ坊に自信を取り戻させました。

そして同時に後悔もさせられました。

『ああ、もっと早く婚活していれば良かった』とつくづく思ったのです。

シシ坊は、婚活など出会い系の業者にお金を払うのが嫌で、40歳から42歳までの二年間、自然な出会いからの恋愛結婚を勝ち取ろうとあがいてきました。

20代、30代のあいだ、ほとんど交際相手が途切れたことのなかった自分が、いまさら女性と出会うためにお金を払うなどというのは、ありえないほど不愉快なことだったのです。

そのため仕事や趣味のツテで知り合った独身女性をどうにか恋人にしようと暴れに暴れたのですが、結果は全敗でした。

プライドを著しく傷つけられ、そしてお金よりはるかに大事な、二年分の若さを失いました。

過ぎた日々を悔いても、若さが戻ることはありません。

(これからは惜しまずに出会いに投資し、時間のロスを最小限に食い止めよう)

電車の中でそんなことを考えつつ、恵比寿にむかいます。

■トモコさんと再会

恵比寿駅では、ぶじに時間どおりトモコさんと落ち合うことができました。

「あ、どうも〜こんばんは〜」

「あ、やあやあ、どうも」

今日がカップリング後の初回デートなのですが、すでに何だか慣れた雰囲気です。

カップリング当日にいきなり映画鑑賞をし、居酒屋へ呑みにまで行っているので、それもそのはずです。

その際に発生した終電逃がし未遂事件のことも、何も感じさせない明るい雰囲気です。

逃がしたらどうするつもりだったのだ?

「恵比寿は遠いですよね? わざわざ来て頂いてありがとうございます」

とシシ坊はねぎらいました。トモコさんの家はシシ坊と同じ埼玉ですが、さらに一時間ほど北上したところにあるのです。

「いや〜、だっておごってくれるって言うんで」

「ははは……」

シシ坊は彼女のこの言葉がいまだに記憶に残っています。

べつに何の気もないやり取りといえば確かにそうなんですが、

(おごってくれるから? ただ単に高い釜飯を食べられるから来たってこと?)

と、彼女の言い草が引っかかってしまったのです。

婚活って本当に言葉のひとつひとつが大事ですね。

ちょっと雑な程度の物言いでも、相手の受け取り方しだいでは命取りになることがあります。

相手側の気持ちに立つ力が試されるイベントです。

■個室で成功率を上げる

その後、私たちは恵比寿駅から10分ほど歩いて、おしゃれな和食屋風の店へとたどり着きました。

予約していたのは個室です。

ほかの客席とは完全に引き戸で区切られた窓際のテーブル席でした。

「いい感じですね〜」

トモコさんも気に入ってくれたようです。

なにしろ仮交際カップルというのは、その物腰や話の内容からして『あ、この人たち婚活中だな?』と、周囲にバレやすいので、それを気にしなくて済む個室というのは大きな利点になります。

仮交際なのにそんなに投資していいのか? と思う人もいるかもしれませんが、

もし店選びをケチってデートを失敗し、今後の交際をお断りされた場合、また相手を探すところからやり直しになってしまいます。

そのとき失うものは、中途半端にかけたデート費用だけではありません。

きっちり失敗した時間ぶん、老いていくのです。

むしろ仮交際だからこそ良い条件を整えて、手がたく関係を進展させるべきというのがシシ坊の考えでした。

■大事な質問

前菜から吸い物、お造りから焼き物、そして締めの釜飯、出てきた料理はどれもおいしかったです。

そして静かな個室でだいぶ打ち解けた話ができ、シシ坊は成功の手ごたえを感じました。

頃合いを見計らい、シシ坊は大事なことを聞き出そうと打って出ました。

トモコさんには、たずねたいことが二つあったのです。

「それで、いつ頃までに結婚したいって考えてます?」

ひとつめの質問を、出し抜けに訊いてみました。

なにしろトモコさんは『男と別れて暴走』し『終電を逃がそうとする』不安定な言動のある人ですから、

心構えがどれほどかを確かめたかったのです。

するとトモコさんはこう言いました。

「もう、今日にでも結婚したいですよ〜」

「ですよね? 僕もです」

まっとうな意見でシシ坊は安心しました。アラフォーですし、良い相手さえいればすぐにでも結婚したいのが普通でしょう。

「子供については、どうしたいだとか考えてます?」

ふたつめの質問を、間髪いれずに訊いてみました。

この質問は今でもちょっと失敗だったかな、と思っています。

なぜならトモコさんに子供が欲しいのかどうか、はっきりするよう求めたにもかかわらず、シシ坊自身の子供についての考えは非常にあいまいだったからです。

これまで15年間の同棲生活の中で、何度か相手の女性と子供を持つ機会がおとずれたのですが、ついにそれを実らせることはありませんでした。

それがなぜ婚活となると子供にこだわっていたのか、自分でもよくわからないのですが、

もしかするとただ、わかりやすい結婚の象徴として子供が欲しかったのかもしれません。

15年間の同棲生活と、結婚との大きな違いを感じることのできるシンボルとは、子供のいる生活ではないかと考えていたように思えるのです。

■マキさんのほうがいいかなあ

質問に対し、トモコさんは「いや〜」と少し困ったようなそぶりを見せ、こう言いました。

「なかなか、こうだ! とはっきり言うのはむずかしいですよ」

「それは……特に欲しいわけでは、ない?」

「ていう訳でもないんですけど、正直、なかなか考えられないですよ」

(うーん……何だその答えは? どう解釈すればいいんだ?)

結局この夜、はっきりした答えを彼女から引き出すことはできませんでした。

(なんだよ……けっこう真剣な話題なのに、どうしてそこをフワッとさせるかなぁ……)

そして締めのデザートも食べおわり、お会計を払ってお店を出るとき、シシ坊は若干の消化不良感がありました。(食べた料理のことではなくお話の内容です)

(トモコさんよりは、マキさんのほうがはっきりしていていいかな……)

子供の件については、マキさんは「どうしても欲しい」とはっきり主張しています。

すると、なんだか考えがどんどんマキさん側に傾いてくるのです。

(トモコさんよりおごられることに対して礼儀があるし、身体の太さはどっこいだけど、トモコさんよりはマキさんが身長高くて目立たない感がある……)

(トモコさんは39歳、マキさんは37歳……この二歳差はバカにならない)

(年収も、マキさんはトモコさんより200万円以上高い専門職……『ひそかに専業主婦をねらってる臭』もあまり匂わない……見通しがよいのは間違いなくマキさんか)

恵比寿駅までの帰り道、シシ坊はずっとそんな「マキさん推し」を考えていました。

もしかすると、はじめからシシ坊の心の本命はマキさんだったもかもしれません。

トモコさんとのデートは、今後マキさんのほうを選んでも間違いではない、という意見を固めるために設定しただけのような気もします。

続きます。

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